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I'm only sleeping

日記 雑記 思いつき ついったー https://twitter.com/1dgwa

ありふれた物語の帰結

 だらしなく太った腹回りがズームアウトして一人のスーツを着た男を映し出す。その髪は薄く、肌は脂ぎっていて淫蕩な雰囲気を纏っている。ソファーに手を組んで一人座っている。ウイスキーやら葉巻やらが置かれても不思議ではない雰囲気があるが、そこには粗末な作りのテーブルが置いてあるだけだ。政治家が本当の権力を持っているなんて誰も信じてないが、彼には本当の権力者だと思わせる風格があった。彼の資産は全て差し押さえられ、半ば監禁状態にあり、耐えず監視されている…今現在も。しかし彼は本当の権力を持っていて、いつ僕に対する監視命令が解除されてもおかしくない思わせるのだった。彼……黒峰一市は政治家だった。嘗ては大蔵大臣をやっていたこともある。彼の来歴を見ても経済の知識なんて一つもないのだが。

 黒峰は田中角栄以来の、叩き上げの政治家というやつだった。しかし彼の過去を見てもどうにも不可解なことが多い。彼がジョン・タイターだなんて考えた人間もいた。それほどに彼の国の予算を賭けた不可解な投資は大当たりし、結果として財政問題が解決してしまったのだ。その取引はいかなるインサイダーも理解出来ないほどに不可思議なもので、それゆえにいかなる罪にも問われなかった。

 にもかかわらず彼はその、日本の財政を救った取引のためにここに軟禁されている。

 モニター越しにみる黒峰は実に落ち着いている。国会で見た彼からは想像できないほどだ。あまりにも完璧な取引をしたがゆえに軟禁されている。その辺の政治的事情を僕は知らない。国の圧力がどうこうという話は様々に聞くが、結局のところ誰も殺すことは出来ない。逮捕することもできない。彼から全てを奪っておきながら、誰もが彼の言葉を待っている。