I'm only sleeping

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十字街1

 

旅先で昼過ぎに目覚めた。予定もないので十字路が延々と立ち並ぶ街を散歩していた。延々と歩きまわっているうちに街は郊外へと変わり住宅街が立ち並ぶ。碁盤状に立ち並ぶ街並みは延々と続いている。自分が映らない鏡で囲まれた世界のようだ。道はどこまでも伸びており、代わり映えのしない建築物が立ち並んでいる。何処にいるかを忘れてしまった。コンビニエンスストアに立ち寄り、おにぎりを幾つか買って食べる。電車はどこかに消えてしまった。バスもタクシーも見当たらず、無愛想な乗用車が延々と走り続けている。人々に声をかけようと思っても、彼・彼女は絶妙なタイミングで目を逸らし、拒絶する。

 一人の少女と目が合う。病的に痩せた女だ。髪の毛は肩まで伸びている。その肌はどことなくくたびれた感じがある。それが体質的なものか、疲労に寄るものかはわからない。しかしその中には妙な愛嬌があって、僕が話しかけようと思えたのだった。

「私も延々と迷っているの。出口なんて無いみたい」

「僕はこの辺に宿があるんだ」

「でも多分、戻れない」

「大丈夫だよ、来た道を戻れば」

「ここは別の場所。全てが私たちによそよそしい。関わり合いを拒絶した他人だけの街なの。人々が幾らかの親しみを向けることは絶対にないし、取引に応じることもない」

「それは、やってみなければわからない」

「やってみたから言っている。あなたに無駄な努力はさせたくない。同じようなことを知ってる仲間がいるの。彼らは話が通じるから、あなたも来るといい」

彼女はきっぱりそう言うと、強い意志を持つ足取りで真っすぐ歩いた。

 

 そこは何の変哲もない団地だった。どこにでもありそうな、いくらか汚れた白の建物で、雪国にもかかわらず屋根は平らだった。何があるわけでもなく、僕たちは階段を昇り6階の部屋にはいる。人気はなさそうだった。