I'm only sleeping

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the race from chiptune

俺がどのくらいの集団にいるのかはわからなかった。走り続けて三十分になるが、息一つ乱れない。それは俺だけではなくて、周りの連中もだ。時折大きな谷があるから、助走をつけないと落ちることになる。谷を超えるには十メートルほど飛ばなければならない。俺たちは、軽々とそれができるようになっていた。何をされたのか、記憶はあまりはっきりしない。気づけば走りだしていた。気分は良い。疑問符が頭を駆け巡るが、走ることの心地良さがそれを無視して頭を前に進ませる。後ろでは悲鳴が聞こえる。振り向くと、巨大なローラーが転がっている。横を見るとゴールした人間には一億円、と書かれた巨大な横断幕がある。俺はこんなレースに参加した覚えはない。目の前では巨大な鎌が揺れている。それを抜けろということらしい。競技者の首が飛ぶたびに歓声があがる。俺は立ち止まって、タイミングを見計らって、全力で駆け抜ける。迷わずに走ることで5つあった鎌を一気に抜けることができた。傷は一つもない。集団はばらばらになってしまった。後ろではタイミングを逃した人間が震えている。ローラーは相変わらず迫り続ける。何人もひき殺しているのに、勢いが遅くなるということはない。

 幾つもの障害を乗り越えた。ほとんど刃物だった。ありえない高さから飛び降りることを強制されるように思えた。何人もが思い切り飛び降りて、地面にたたきつけられて死んだ。上を見ると光る糸がわずかにあった。それに乗っかって走れば良かった。ローラーはいつの間にかなくなった。時間制限が消えたということなのか、観客たちもいなくなったようだった。趣味の悪い声援は消えていた。沈黙。

 

 どれだけ障害物を乗り越えてきただろうか、俺は何度も死んでいいはずだった。不思議な奇跡が俺にどう振舞えばいいかを気づかせた。神というのがいるのだったら、それが俺を守っているのだろう。そう考えるのに何の不思議もなかった。

 何も無い平原が広がっていた。アスファルトの道がただひたすらまっすぐに広がっている。のどの渇きを覚えた。そんなのは初めてだった。飲み物を得るにはゴールするしか無いのだろうな、と思った。横断幕の文章はいつの間にか血によって塗りつぶされていた。

 そこからは簡単な道だった。障害物は何一つなく、俺は身体を動かすことを楽しんだ。ゴールが見えた。人はだれもいなかった。後ろにも誰もいない。俺一人だけのようだった。

 ゴールをする。どこからか歓声があがる。全身が痛みを覚え、倒れこむ。

沢山の死を夢に見る。それは俺自身だ。首を切られ、地面に落ち、骨を砕いてローラーに潰され、電気によって脳を焼き尽くされる。嫌というほどそれは続いた。

 

 空腹と渇きに眼を覚ます。俺は真っ直ぐの道からそれて、横断幕の方へとふらふらと向かう。ハリボテを超えると街があり、日常がある。財布なんてなかった。俺はそのまま力を失い倒れる。サイレンの音が近づき、遠ざかっていく。