読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

I'm only sleeping

日記 雑記 思いつき ついったー https://twitter.com/1dgwa

アンチフラジャイルについて読み途中だけどとりあえずまとめて書く

ここ一ヶ月くらいNassim Nicholas Taleb著のAntifragile: Things That Gain from Disorder 

http://www.amazon.co.jp/Antifragile-Things-That-Gain-Disorder/dp/1400067820

をずっと読んでいる。

この本に関する日本語の書評をみる限り、この本は経済学に関する本として捉えられているみたいだ。

それは確かにこの本の主張の一つではある。

 

つまり、アンチフラジャイル=苦難に応じて、崩壊の危機に応じて、強いストレスがかかることによって、より強くなれるような経済システムを考案すべきであり、フラジャイル=壊れやすいシステムを解体するべきだと、タレブは提言している。

 

だけどそれだけじゃない。

 

彼は最初に、領域にとらわれることについて書いている。根拠に基づく医療を提供する医師は、自らの資産を運用するときに、その投資手法がエビデンスに基づいているかを考慮することはめったにない。そういう領域に囚われた思考は人間の癖だが、そうするべきでない。つまり、一つの考えをあらゆる場面に適応してみるべきだと書く。

この本で言えば、それはフラジャイルか、アンチフラジャイルかという分類を自分自身の健康、教育、経済、発明、投資など、あらゆる側面にあてはめてみることだ。

 

アンチフラジャイルは、どんなふうに世界を見るかについての本だ。それはマルクスや、ニーチェや、カフカや、ウェルベックの著作と同じ系譜に属する本だ。世界の見方をまるっきり変えてしまう。

じゃあどんなふうに?彼は膨大な例をあげる。あちこちでソビエト=ハーバード式のトップダウン型のやり方を馬鹿にする。そして歴史家たちが歴史に残ったもの=書かれた記録に着目して歴史を描いてきたことを批判する。理論はいつだって軽蔑の対象になる。トップダウン式に生まれた発明は原子力くらいで、大きな発明というのはほとんどが、理論をじゅうぶんに知らない技術者たちが、経験で手探りで設計したものなんだと、彼は示す。ジェットエンジンサイバネティックスはそういうふうに見つかったもので、あくまでも理論は後付にすぎないのだと。だけど現代では、理論を学ぶことで発明ができると教えられる。そんなものはほとんど無理だ。目的通りに発明品が生まれた試しなど殆ど無いのだと。

 

ブラックスワンでおなじみの人物、無知ででぶで教養のない、しかし優れたトレーダーの、ファット・トニーが再び登場する。彼にとって真実か間違いかは重要じゃない。重要なのは、カモかカモじゃないかだ。彼はソクラテスと論争する。

そして言語で示せないものを言語化することによって破壊してしまうことがあるのだと説く。

 

タレブはバーベルメソッドをあちこちにあてはめる。つまり、一方で高いリスクをとり、大部分では非常に安全な投資を行うこと。一時期激しい運動をして、一方で穏やかな、非常にゆっくりとした散歩を行うこと、安定した職業で、無難な振る舞いをしながら、家ではとんでもない思想について考え、そして書くこと。良いブラックスワン=ありえない出来事に自身を晒し続け、悪いブラックスワンから身を守ること。

 

タレブは優れた本というのは要約が不可能な本だと書いていた。これはその部類に属すると思う。あちらこちらで日本語の要約を読む度に、この本を上手く紹介していない、上手く読めていないと思う、そういう本だ。実際これが経済学について語っているのはほんの一部にすぎない。勿論あちらこちらのページで経済学者を罵倒しているけど、実際に書いているのはどうやってあらゆるリスクに対処するかだ。どちらかと言えば、個人にとってどのようにリスクに対処するかを書いている。

 

彼が語っていたことの一つに、うぶな介入というのがある。患者に医療行為を行うのは、それ自体が多かれ少なかれリスクとなる。しかしそれを、例えば十九世紀の医師は無邪気に行ってしまいがちだった。教育では未だに行われている。経済もしかり。うぶな介入の問題点は、介入自体が良いことだと捉えられてしまっているために、介入自体のリスクと、介入で得られるメリットを全く天秤にかけていないことだ。そこでタレブは一つの例を出す。合法的に人を殺す方法だ。それはその人のために専属医を雇ってあげることだ。専属医というのは、その性質によりどうしてもうぶな介入が頻発する。それゆえに彼は過剰な医療行為を受けることになり、寿命が縮まる、ということだ。

 

幾つもの印象的な例と、はっきりとした主張が根底にあるがゆえに、この本は、かなりの数の造語と、複雑な文章構造にも関わらず、かなり読み進めやすかった。早いとこ邦訳されてほしいと思う。まだ読み終わったわけじゃないんだけど、とりあえず今のところ印象に残っているところを片っ端から書いてみた。最初は章ごとの要約をしようと思ったのだけど、そういうスタイルで感想を書くべきではないような気がしたんだ。