I'm only sleeping

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意味の迷宮

知らない街で、知らない景色が広がっている。同じくらいの高さ、だいたい二階建てくらいの建物が延々と広がっている。目印になるような高い建物は見えない。遠くにはあるのかもしれないが、霧がうっすらとかかっているせいでみえない。歩いても歩いても延々と道が続いている。古い道具を売る商店街がみえる。ずっと前に似たような通りを通ったような気がする。しかしそれはいつのことだったんだろう。一年前なのか、十年前なのか、俺にははっきりとわからない。ふと立ち尽くして、電柱の住所を調べる。中町二番町ー2014と書かれている。しかしここが何市なのかはわからない。携帯の電波は一本だけだ。苛立たしいほどゆっくりとページが読み込まれていく。電池がじりじりと減っていく。残り20%の警告が出る。常駐アプリを全部切って、コンパスだけをオンにする。コンパスの針がゆっくりと揺れて、自信なさ気に北を示す。俺はそっちに歩いていく。携帯を見ながら歩いているのは何か恥ずかしくて、俺は思わずポケットにしまう。ネットで知り合った女からLINEのメッセージがとんでくる。音楽の話だ。俺は頭の中で流れている曲を答えた。そうしたら彼女もその曲を聞いていたんだ。シンクロニシティ。だがその間に電池はどんどん減っていく。俺は印をつけることに決める。不気味なほどに人通りが少ない。老婆が歩いて来るがこちらが見えていないようだった。ひどく曲がった腰で足を引きずりながら歩いている。汗を拭いている間に携帯の電池は途切れていた。俺はどっちが北なのかを見損なった。十字路に出ていた。上町に出たようだが、俺はそんな名前、知らないんだ。どこにでもありそうだ。こんな情報がいくらあっても、俺がどこにいるかを知る役にはたたない。目の前にある中村商店だってそうだ。この店では菓子や缶詰を売ってる。薄暗い店だ。

 

送電塔をたどって、どこか別の町にいけるはずだった。その時の俺はあまりに小さかった。大きくなってからはそんな馬鹿をする仲間も暇もなくなっていた。そしてもはや携帯電話ができて、冒険は遠い場所になった。今こそ送電塔を辿る時だ。公園には大きな送電塔があって、それに沿って歩いていけばきっとどこかの大きな街か発電所に辿りつくはずだから。単純な計算だった。頭の中のボードに電柱が示す住所と、送電塔の個数を記録していく。新町、本町、横町、南町、どれも特徴がないせいで覚えるのは難しかった。この迷宮が何を意味してるのか俺にはわからない。せめて夢ならいいと思う。身体には汗がびっしょりと張り付いている。俺は眠るならクーラーをつけっぱなしにするし、寝汗をかくような季節じゃない。しかし俺は眠りながら布団をかけているのかもしれない。何かから身を守るように。そして布団をかぶって温かい暗闇のなかで自分だけの迷宮の空想をしたっけ、それは何年前のことだったんだろう。歩いても歩いても同じような町の光景が続いている。それは昭和の町を思い起こさせる。俺が生まれたのは平成なのに。商店でパンとコーラを買う。公園のベンチに座って食べていると、霧雨が降ってきているのに気づく。身体はわずかに冷えるが、汗を止める役にはたたない。