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I'm only sleeping

日記 雑記 思いつき ついったー https://twitter.com/1dgwa

星が意味をなくすまで

短編小説

家にあるものはなんだって壊されたから。

 

 

好きになったおもちゃは壊されて捨てられる。落書きは読み上げられ、破かれたり燃やされたり。失敗するごとに一つずつ壊される。どこに何を書けばよかったのかわからない。ノートの余白に書き付けた僅かな文章を目ざとく見つけて罵るんだ。

 

そいつが。

 

僕の部屋に残っているのは教科書とノートだけだ。書きつけておくことはできない。消しゴムの跡をみつけるとそいつはなんだこれはと罵るんだ。

 

何もなくなった僕が失敗すると、そいつは僕を外に置き去りにするようになった。雪の降る日だった。お腹がすいてドアを叩いても、聞こえるのはテレビの笑い声だけ。

 

泣いても、喚いても何も起きない。近所の人が家に入れてくれたけど、そいつが怒り狂うとそれもできなくなった。

 

そいつはとても強かったから、抵抗なんて考えなかった。包丁を突き立てようとすると拳銃を突きつけられた。

 

僕の寝室は、外から鍵をかけられるようになった。

 

 

家に帰れなくなって、近所の誰もが無視するようになった。僕は静かな置物になった。

 

星を見て過ごすようになった。なるべく動かないようにして。名前をつけていった。物語を紡いだ。それは静かに動いたり、書き換えられたりした。

 

 

次にやってくるのは、あいつだ。あいつは僕を連れていってくれた。あいつはずいぶん優しかった。僕の身体をべたべたと触る他には、嫌なところはなかった。僕は星の話をずっとしていた。優しかったけれど、話を聞く気にはなれなかった。顔が嫌いだったのだ。身体も嫌いだった。匂いも嫌いだった。だけど腹いっぱい食わせてくれたし、ぐっすりと眠ることができた。あいつは僕をあちこちのプラネタリウムに連れていってくれた。沢山の本を与えてくれた。星の名前を一緒に呼んだ。

 

 

僕は逃げ出した。僕は十分おとなになっていた。

殴り飛ばし、財布を奪った。

 

遠くに走った。小道から外れた場所に逃げ込んだ。そのまま枯葉を身体に載せて、夜を過ごした。

 

新月の夜で、星が眩しかった。

 

 

物語は消えてしまっていた。