I'm only sleeping

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目にすればそれとわかる場所

太陽が出るずっと前、覚え書きを片手に家を出る。

目的地ははっきりとしない。多分、南にある。

目にすればそれとわかるものだ。

最初の各駅停車に乗る。

4人がけの向かい合った席に座ると、後ろから声が響いてきた。

心地良いリズム、沈黙は旧譜、言い淀みはゴースト・ノート。

ヘッドホンを外して、耳を澄ます。

内容ではなく、その音楽を聴く。

 

幾つもの街を越えたけど、手動ドアは開かない。

乗っているのは僕と彼らと車掌だけ。

雪は深くなっていく。

長年の疲れが染み付いたガラスは、吹雪く音を遮ってくれる。

人のいない駅で電車は停まり、ドアをあける。

迷った雪が車内に降り注ぎ、すぐに溶けていく。

僕はダッフルコートの留め木をかける。

 

急行列車が走り抜けるまであと十五分。

となりの人たちは話に夢中のままだ。

かつて在った場所、ずっと昔に会った人の話。

コーンポタージュを探しに出かける。

改札のない駅を出ても、自販機は見当たらない。

深い雪を踏みしめて、足は熱を取り戻す。

昭和をうかがわせる看板が、時代遅れの電話番号と一緒に、古びた廃屋にかかっている。覚え書きを取り出し、ボールペンで記録する。

雪が降りかかる。振り払うと、かすかに滲んだ文字が残る。

急行列車が走り抜けるのを聞き、いそいで駅に戻る。

車掌が微笑みかけ、僕は頭をさげる。

ポケットに覚え書きをいれて、前と同じ席に座る。

電車がゆっくりと走り出す震えを愉しむ。

 

僕は求めていた場所を見つける。

寂れた駅を降りるとき、不思議なメロディーを聞く。

ここでしかきけないんです、と男は言う。

僕は丁寧に返事をして、お別れする。

あとは足に任せておけば良い。そう確信した。