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I'm only sleeping

日記 雑記 思いつき ついったー https://twitter.com/1dgwa

カズオ・イシグロ 『わたしを離さないで』を読んだぐちゃぐちゃの感想。ネタバレあり

書評

以前からなんとなしに調べていたこともあって、そのしかけや、秘密については大雑把なところは知っていた。

謎が解けていくのは楽しみの一つなのだけど、この小説の本筋はそこじゃない。

なんとなしの、一人の頭の中で作られる世界の認識の仕方。雰囲気による理解や、うわさ話、作り事の希望がだんだんと本当のことみたいに思えてきたり、都合の悪い話を誰も検討することなく、検討すればたしなめられて、少しずつ過ぎていくようなことだ。

 

登場人物たちの振る舞いは、誰も彼も不完全だ。真実を探求しようとする人が誰もいない。それは環境ゆえなのだろうか。そしてそれだけ大切にされたヘールシャムという場所は、大人になるにつれ話題に上らなくなる。

 

その振る舞いは、なんだか危なっかしい場所で、尖ったものに当たってしまわないように気をつけながら生きているようにも思えるんだ。踏み込むことで、きっと残酷なことがわかる。だから、それを避けて、避けて、受け入れられるようになるまではそうし続ける。爽快感はない。もちろん、感動を見出すことはできるが。

 

 そういえばこの小説の中で、美しい景色というのは出てこなかったような気がする。どこも箱庭みたいな、押しつぶされたような・・・それはイギリスの天候なんかも関係するのかもしれないんだけどさ。著者はインタビューの中で、子供時代というものを体験して欲しかったと書いていたのだけど。

 

注意深く設計されたが故に、残酷さを生み出すようなしくみ。保護官が怖かったと言う話。誰も彼も弱すぎたみたいで、最善を尽くしたと言っている。

物語の突き抜ける一点がないんだ。

良い小説なのかもしれない、だけど、なんだか掴みどころがないっていうか・・・反乱と逃走のテーマは打ち捨てたと著者はインタビューで書いていたけど、それを過度に打ち捨てたせいなのかな。

本を読んですぐ、著者のインタビューを読んでしまったせいで、自分なりの言葉で話すことが出来ないみたいなんだ。

 

 昔もそんなことがあった。北野武アキレスと亀を友達と見た時で、議論になって相手がでもこれはたけしがインタビューで言ってるからなんていいだして、それでおしまいになっちゃったんだけど、結局それが答えみたいになっちゃうのは凄い不満だ。

 世界観を自分の中で勝手につくって、それが著者の主張とぜんぜん違ってたとき、どこか不安になるけどさ、それはなんだか反則って感じがする。結局著者が何を主張しようが、そこにある文章から間違って読み取らないってこと以外は、何を言ったっていいわけだし、ただそこで正確に読むってことが大切な事なんだけどさ。

 

なんとも宙ぶらりんなわけだ、でも不安で、読んだ後はどこかの感想を読みたくなる。いつもそうだ。それで結局自分が何考えてたのかを忘れたら、意味がないっていうのに。

 

でもいいよ、結局僕がいいたいのはさ、この小説はどうにもやりきれなくって、でもなんだかよくできてて、だからなんとなく感動しちゃって、それが無性に腹がたつってことなんだ。