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I'm only sleeping

日記 雑記 思いつき ついったー https://twitter.com/1dgwa

疫病と世界史 下巻 まとめ

大きく分けて三つのパートに分けられる。

4.モンゴル帝国の拡大による各地への疫病の伝搬、そしてそれによる騎馬民族の減少によるモンゴル帝国の衰退。

 

5.ヨーロッパの南北アメリカ大陸への入植が、先住民に激烈な感染症をもたらし、人口の9割を死に至らしめた。

 

6.1700年以降の医学・公衆衛生学が感染症をコントロールできるようになったことについて。

 

4.マクニールは「世界史」ではモンゴル帝国の衰亡を疫病を主要因として描いたわけではなかった。人口の減少、そしてモンゴル帝国が極めて素朴な文化しかもっておらず、自らの文化にさほど固執しなかったゆえに文化的に同化したとしていた。しかし疫病と世界史ではその主要因を疫病による人口の減少と説明する。また、人口の減少によって文化を守っていくだけの人員を保つことが困難になったとも。

なんだかcivilizationが世界史を上手くモデル化してるなあって、世界史の本を読んでいると凄く思うんだけど、実際どうなんだろうなあ。

人口は文化算出に影響を与えるとかね。

 

5.主にスペインが南アメリカに入植したときの劇的な疫病の影響を描く。そもそも南アメリカには、スペインの入植以前には、病気といった物が存在しなかったらしい。先住民たちは密集して都市を作ることはあまりなく、都市を作るにしても主な家畜のアルパカやラマは、さほど密集して飼われていたわけではなく、人との関わりも薄く、それゆえに人と家畜の間で病気が移動することは珍しかったらしい。

多分この章はマクニールが最も説明したかったところなのだと思う。上巻の説明でも書いたが、なぜスペイン人600人の部隊が容易に支配者として君臨できたかという説明を、文化的なものや技術の優位性、はたまた人の有能さに求めるのはあまりに不十分なのだ。そしてその間違った理解は、人種差別的な考えをもたらす原因にもなり得るのだと思う(ここについてもっと深く説明したのは、ジャレド・ダイヤモンドの「銃・病原菌・鉄」だと思うんだけど、まだ読んでないから詳しいとこはわからないし、マクニールはただそれまでの見方は違っているはずだと証拠をあげて主張するだけだ。銃・病原菌・鉄はそもそもが南アメリカ先住民の出自を持つ友人に、なぜ僕らとヨーロッパ人でそこまで差がついたのか、ということに上手く答えられなかったのがきっかけで書かれたものだったと思う。

 

話が脇にそれた。

疫病の影響はとても大きかった。南アメリカの環境はアフリカと似ており、病原菌が生き延びるのには絶好の環境だった。それゆえに、病原菌は駆逐されず、また先住民たちは多数の病原菌すべてに免疫を獲得することはめったになかった。そうして何度も疫病にさらされた結果、人口の九割が死に絶えた。そして、スペイン人はほとんど疫病で死ぬことはなかった。これは先住民に、ある宗教的な説明を与えた。つまりスペイン人は神の使いであり、お怒りになっているのだと。それ故あちこちの先住民は屈服し従い、また人口の摩耗によりぼろぼろになり知識が失われ維持が不可能になった自らの文化を捨て、キリスト教を信仰するようになった。

 

6.1700年以降の医学が疫病との戦いで果たした影響を描く。ここで注目してもらいたいのは、1700年以降ということだ。つまりそれ以前の医学の影響は、微小なもので、与えた影響も正・負まちまちであり、また医者を呼べる裕福な階級は限られていたため、無視できるという考えによるものである。で、西洋医学がワクチンなり公衆衛生上の効果的な手法を用いれたのはなぜかって考えも入ってくる。このへんの西洋の進歩に関する考え方は、世界史でも描かれているし、元はといえば「西洋の台頭」に描かれたものなのだろう(世界史の訳者解説でそんなことが書いてあった)ただこれ翻訳されてないっぽいんだよなあ。西洋の医学の進歩は、まず公衆衛生上の処置にはじまる。つまり交易船に対する検疫や軍隊における清潔さの徹底など。それは大規模な戦争を可能にした要因でもある。

 そして大きく描かれるもうひとつの出来事は、天然痘に対処するための方策である牛痘が世界的にいかに素早く広まったのかということだ。

そしてコレラ対策のための下水道の整備が進んだことも。

最終章は基本的に近代医学がいかに感染症を根絶させるにあたって強力に働いたかをえがく。しかしそれでも人類は、細菌・ウイルスのミクロ寄生から逃れたわけではなく(そうこのミクロ寄生とマクロ寄生というのが一つの中心をなす概念なのだが、他の書評を見ればここに着目したものが多かったので、とりわけ書く必要を感じなかった。基本的にミクロ寄生は微生物・ウイルスによるもので、マクロ寄生は他の人類によるものである)未だ生き延びているインフルエンザやエイズウイルス(両者とも、きわめて突然変異が多く、一つのワクチンが効果をあげる期間は短い)などが、いつ猛威をふるうかはわからない、と警告して終わる。