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I'm only sleeping

日記 雑記 思いつき ついったー https://twitter.com/1dgwa

無い

窓を開けて空気を入れ替えて糞寒い風が流れこんでくるからぼろいコートを羽織ってティファールの電源を入れる。溶けてないココアが入った容器にインスタントコーヒーをいれてお湯を注ぐ。寒さにはどれだけ時間がたっても慣れないし呪詛の言葉だけが浮かぶ。…

十字街が完結しました。

全てが他人の街で知り合ったわずかな認識してくれる人たちと抜けだそうとあがく話です。 1話 十字街1 - I'm only sleeping 2話 十字街2 - I'm only sleeping 3話 十字街3 - I'm only sleeping 4話 十字街4 - I'm only sleeping 5話 十字街5 - I'm …

十字街6

二人がやっていたのを目撃したわけではないが、その雰囲気は濃厚で、そのけだるい空気とどことなく気まずい僕を見る目線が。同じ屋根の下に住んでいることから推察するべきだったのかもしれない。今になって考えてみれば思い当たる節はいくらでも思い当たる…

序文 大災害を導いたとされる未来予測機から再構成した過去について

シミュレートの不完全な実装としてのD機関は、あり得る未来の可能性を幾つかの層に分けて、それぞれが相互に関連し合いながら幾つかの未来を示すという点で、凡庸な未来予測機とのちがいを示していた。製作者たちは遠い未来への利用に関しては全く想定してい…

十字街5

「あいつがどうしてたかについては何も知らないの。なんかあんまり自分のこと語らないしね。私も誰かのカウンセラーのやる趣味はないし、そのまんまにしてるんだけど」そういう彼女の口ぶりは、どこか奇妙な風だった。それに普通の人は、カウンセラーやる、…

十字街4

時雨は団地にはいなくなっていた。部屋の中は相変わらず殺風景だった。彼女の寝室をノックしても声はなく、鍵も閉まっていた。「また探しに行ったみたいだな」安中はそうつぶやくとパソコンの電源を立ち上げた。「ちょっと探しに行ってきます。というと、好…

十字街3

外に出て、商店街に向かう。人通りはそこそこに多い。スーパーに入り、カゴを渡される。「食い物は惣菜と弁当。歯ブラシやら電池やらなにか必要な物があったら入れてけ」安中はそれだけ言うと手慣れた手つきでかごに惣菜を入れる。やけに揚げ物ばかりに偏っ…

十字街2

部屋の中はこじんまりとしていた。幾つかの棚があるが、そこの品物はなく、布団が敷きっぱなしなのが目立つ。台所は使われた形跡がなく、リビングのゴミ箱には雑多にコンビニ弁当が押し込まれている。激しいタイピング音と、銃が乱射される音がしてすぐに誰…

十字街1

旅先で昼過ぎに目覚めた。予定もないので十字路が延々と立ち並ぶ街を散歩していた。延々と歩きまわっているうちに街は郊外へと変わり住宅街が立ち並ぶ。碁盤状に立ち並ぶ街並みは延々と続いている。自分が映らない鏡で囲まれた世界のようだ。道はどこまでも…

Walk slowly

まっすぐと、道があって雪が降っている。僕は歩く。どこに向かっているのだろうか。ここは夢の中みたいだ。肌の質感は妙に柔らかい。風はほとんど吹いていない。冷たい雪が微かに顔にかかるけれど、それさえも快い。 僕は目的を忘れた。目的らしきものがあっ…

精製された希望

鬼椿製薬の研究室で作られた新しい化学物質は、心臓の安定性を高めることを目的として作られていた。LFI2563は、特別心臓の安定性を高める物質ではなかったが、投与されたマウスが妙に幸福そうに見えることから、さらなる研究が必要とされていた。 無論…

国松Aの真実の世界

国松Aが坂口C=中心人物のスマートフォンを拾ったときに、彼のパスコードロックを解くことができたのは単なる偶然である。彼は自分の誕生日をパスコードにしていた。0412。だがそれをAが知っていたわけではない。彼は単純に一万分の一の確率に当たってし…

無意味性の解体

「あんたの自我が作品になる。周りの連中がコメントをよこして、それがあんたの頭の中で滞留するの。それで変化していく神経回路を三次元モデルで再帰的に記述したものを飾るの」 「意味が分からないんだけど」 「意味が分かる必要なんて無いの、君はわたし…

the race from chiptune

俺がどのくらいの集団にいるのかはわからなかった。走り続けて三十分になるが、息一つ乱れない。それは俺だけではなくて、周りの連中もだ。時折大きな谷があるから、助走をつけないと落ちることになる。谷を超えるには十メートルほど飛ばなければならない。…

牛丼屋のスケッチ

キムチーズ牛丼が食べたかった。 ネットで調べたらご飯と牛丼の間にチーズを入れてもらうといいと書いてあった。 店は改装され、足のつかない椅子が増えていた。回転率を増やしたいのだろう。 注文したところで商品を受け取る方式になっていた。4つしかない…

囚われの森 前編

不幸な状態を幸福の前段階として捉えることで幸福の総量を増やせるだろうか。目標を五年とか十年先に据えて、そこに幸福があると考えることで日々をやり過ごすことはできるだろうか。前者にはノー、後者にはイエス。幸福の可能性こそが行動の最大の要因とな…

時間葬

時間はあと三時間で埋葬される。実際は、僕らの時間は永遠になっている。シミュレーションに関する三つの可能性は、一つに収束した。つまり僕らはシミュレーションの中に存在し、僕らの世界の下位にシミュレーションを構築できるということだ。勿論その下位…

Loveless

二度と会わないであろう友人について話をする。峯岸礼二は死んだわけではない。まるで別人のように変わったわけでもない。美しい印象を持っていたのに、いつの間にかそういう魔力が消えてしまったというわけでもない。ただ、何かとても悲しい出来事があって…

殺人探偵(全)

三つに分けてアップしたけどそうでなければ書けなさそうだったという理由だし短いので一つにまとめ直しました 私が最後に探偵だったのは三年前で、沢山の人が死ぬのを見てきた。 私が殺したのだ、と考えることもできる。 この国では殺人罪はほぼ間違い無く死…

引き伸ばされた終焉

賢者は歴史から学ぶというけど、自分が賢者だと思っている人間ほど手に負えない者はない。だとすれば結局、経験以外からは学ぶことはできないのであり、経験から学ぶためには失敗する他ない。だとすれば人生のはじまりの数年間を、簡易化された仮想現実でシ…

ここではないどこか

俺の帰るべき町がどこかにあった気がする。懐かしい場所ではない。 親類は一人もいない。俺の遺伝子を残せるのは俺だけになった。そして俺は全く違う場所にいる。少しずつ記憶も薄れていく。どのみち、魅力的な場所ではなかった。どこにでもあるような町だっ…

脳が膿んでいる

また、だ。 俺が住んでいるのは胎内で、醜い皺があちこちによっている。空でさえもそうだ。吐き気を催す紫色のグラデーションに彩られている。人々の顔のバランスは歪んでいる。 目の前には女がいる。見開いたままの目。瞳孔は完全に開いているが俺はそれに…

旅行記

SNSを介して知り合った人のほうが、現実世界の人間よりも多くのことを打ち明けることができることがある。Kと話したのはミニブログで相互に閲覧しあう仲だからだ。お互いになんとなくつぶやきを読んでいた。そして退屈そうな夜に話してみませんかとダイレク…

洗練された匿名性のために知られてはいけないこと

「届かない言葉を届いたように見せかける、それが我々の本当の仕事だ。だがそうだということは絶対に知られてはいけないのだ」 それが会社に入って最初のブレイコウで上司から言われたことだ。 「これは会社で話してはいけない。そういう事実があることさえ…

手に入れたもの

イケメンになりたい、と黒澤は高校で知り合った時からずっと願っていた。 整った眉、ほどよく引き締まった身体、顔つきもどことなく力が抜けているところはあるけど、悪く無いと言える。見た目は問題じゃないと周りの奴らは言っていたけど、主観的に求めるほ…

過去、但しプラスチックの

記憶が消し飛んだ。俺に過去はない。それは思い出そうとすることすら出来ないものだ。そもそも俺にはそういう欲望がない。 失われたものがあれば取り戻そうとするはずだろう。しかし俺に失われたものはない。はじめから無かったのだ。 しかしそれでは社会生…

居酒屋 喪失体験 何もしない

憂鬱な思い出とかありふれた喪失体験を昔ながらの名作で飾り立ててお涙頂戴の物語にするのはやめたほうがいいってクラサワが言った。クラサワは大学生で、最初はパチンコと酒と煙草とライトノベルとFPSとが好きだったけど五年生になるころにはどれも好きじゃ…

淡夢

その液体を固定させるために。ありふれた言葉の運命を導くために。絡んだコードが白黒のノスタルジアを流入させる前に。君が、つまり記憶が、嘘をついたことを思い出してみる。はじめはささやかなものだった。何も悪いことはなかった。たった一つの傷を隠し…

星が意味をなくすまで

家にあるものはなんだって壊されたから。 好きになったおもちゃは壊されて捨てられる。落書きは読み上げられ、破かれたり燃やされたり。失敗するごとに一つずつ壊される。どこに何を書けばよかったのかわからない。ノートの余白に書き付けた僅かな文章を目ざ…

阿吽の呼吸で入れる相槌は17のパターン。

眠る前に聴くことにしていた音楽があったのだけど、眠らなくなってからは、それが何であったか忘れてしまった。何の前触れもなかった。仕事は、ささやかな困難を抱えていたとはいえ、大まかなところは順調だったし、お金が溜まったら結婚することを約束する…

静けさの街

その街は盆地にあって、閉じている。高速道路はここで行き止まりになるし、鉄道は走っていない。登山列車のようなものを走らせる必要があるのだけど、この街にはそれを走らせるほどの特別な何かがあるわけではないのだ。名物はある。だけどそれは人を呼ぶほ…

自己啓発本のなくなる日(冷凍睡眠者のための手引き)

彼らが、自己啓発本の著者たちが目的としたのは自分の習慣を変えることでした。そして仕事で成果を上げるのか、良い人間関係を築きあげるのか、いずれにせよ社会的な成功と呼ぶべき物を手に入れることを目指していました。彼らの著作のうち、幾つかのものは…

セルフ・タイムクエイク1

その男は高校時代に超能力や幽体離脱に興味があった。そういうものが実在してると考えたわけじゃない。勿論そんな期待が全くないわけではなかったが、時代はそういうものが存在することを許さなかったし、一部の雑誌を除けばテレビでさえ、そういったものを…

すり鉢型空中都市

空中都市地下の端っこに僕の家はあるから、朝になるとゆるやかにすり鉢状に傾いた窓から下の世界が見える。今日は身体検査が行われる。そして何錠かの薬を貰う。それがあると一日はとても良くなる。貰った日に全部使う人もいるが、多くの人はとっておいて、…

綿菓子の地下

ときどき地下に潜っていく。ふんわりとした部屋があって、僕はそこにこもる。空気は少し濁っている。明かりはないが、目を凝らすと坑道が見える。僕が掘った道だ。はじめはただの小部屋だったのだけど、僕が何度も潜って道を作り、幾つかの場所をひらけた場…